ひざの痛みに対する再生医療(PRP療法 )

詳細はこちら

辛いひざの痛みの改善が期待できる新たな選択肢

  • 注射で行える日帰り治療
  • 効果の持続性が高い
  • 副作用のリスクが少ない

近年、健康寿命の増加や健康意識の向上に伴い、PRP療法などの再生医療により、より健康で活動的な人生を楽しみたいというニーズが高まっています。当院ではそのような方に対して先進的な医療を広く提供したいと考えております。

本治療は『再生医療等の安全性の確保等に関する法律』に則り、第二種再生医療等、第三種再生医療等として再生医療等提供計画の認可を得て、定期的に厚生労働省へ治療報告を行っています
提供計画番号PB3230086:自家多血小板血漿(Platelet-rich plasma:PRP)を用いた慢性関節炎の治療(関節内組織)
提供計画番号PC3230081:自家多血小板血漿(Platelet-rich plasma:PRP)を用いた筋肉、腱、靭帯、筋膜の損傷及び慢性炎症の治療(関節外の軟部組織)

ひざの痛みに悩まれている患者さんへ

こんな症状はありませんか?

最近、立ち上がる時にひざが痛む、階段の上り下りでひざが痛む、水がたまる、ひざが痛くて旅行やスポーツもあきらめてあまり出かけなくなってしまった。これらの自覚がある方は、変形性ひざ関節症の可能性があります。

変形性ひざ関節症とは?

変形性ひざ関節症はひざの痛みの原因になる最も一般的な病気で、年齢とともに病気は進行していき、軟骨がすり減ったり、骨のトゲを形成したりすることによって、つらい痛みを引き起こします。痛みによって運動が億劫になり、ひざを支える筋肉が痩せていくため、これまでできていた運動ができなくなるだけでなく、さらに軟骨のすり減りを引き起こし、病気の進行が早まります。軟骨は一度すり減ると元に戻りません。つまり、早期の治療が大切です。

変形性ひざ関節症とは?

これまでの変形性ひざ関節症の治療

通常、手術をしない治療は関節を支える筋肉を鍛える運動療法と肥満の改善が中心ですが、痛みを伴う場合には 痛み止め薬の処方やステロイド注射による関節炎のコントロールやヒアルロン酸注射による膝のクッション性の補填による痛みの一時的な緩和を行います。これらの方法が無効となった場合は手術が選択肢になります。

それにもかかわらず、国内で約1000万人に上るとされている変形性ひざ関節症の自覚症状のある方の中で整形外科で人工関節や骨切り術といった手術治療を受けられる方は、年間約10万人(約1%)しかいません。今まではこれだけ手術を希望しない患者さんがいたにもかかわらず、代替となる治療がなかったというのが現実でした。

そこで、近年注目されているのがPRP療法です。

PRP(多血小板血漿)とは

患者さんの血液を使い自己治癒力高め、切らずに痛みを改善

患者さんの血液を使い自己治癒力高め、切らずに痛みを改善

転んでひざを擦りむいたりして出血しても、かさぶたになって自然に止まり、しばらくすれば傷も治ります。この自然治癒は血小板という血液成分が主に作用して起こるものです。血小板は傷がある部分に集まって、成長因子を放出します。成長因子とは組織の修復を促し、痛みの原因である炎症を抑えます。

PRP(日本語では多血小板血漿)は、患者さんの血液を加工して抽出した血小板やその他の有効成分の複合的な働きにより自己治癒力を高め、痛みや炎症の改善を後押しする治療法です。

PRP療法の特徴

注射で行える日帰り治療

採血を行った当日に短時間で治療を受けることができます。

効果が長続き

変形性ひざ関節症に一般的に行われるヒアルロン酸注射と比較して、長期的な作用が期待できます。

副作用のリスクが少ない

患者さんの血液だけを使用し、治療を行います。そのため、アレルギー反応や拒否反応などのリスクが少ない治療法です。

PRPはこんな患者さんに選ばれています。

入院手術は避けたい

仕事や家庭の事情で時間が取れず、入院ができない。自分の膝で歩きたい。

持病や年齢などの関係で手術が行えない

ひざは痛むが持病があり、手術ができない。年齢が若すぎて手術の適応ではないと医者に言われた。
どの年齢の方でも、身体への負担がほとんど無く、日帰りで治療が受けられます。

ヒアルロン酸注射や装具ではほとんど効果がない

定期的にヒアルロン酸の注射を受けてきたが、効果が少なく満足できない。PRP注射なら、いままであきらめてきたつらい痛みも、より長い期間改善させる効果が期待できます

スポーツ外傷・障害に対する再生医療
(PRP療法 )

詳細はこちら

筋肉や腱の痛みと治癒の促進が期待できる新たな選択肢

  • 注射で行える日帰り治療
  • 効果の持続性が高い
  • 副作用のリスクが少ない

スポーツ現場でチームのフロントやコーチングスタッフ、選手からメディカルチームに求められることは、いかに再発せず早く復帰させるかということです。初めてPRP投与を行ったプロサッカー選手が日に日に良くなっていくのを目の当たりにし、PRP療法に大きな可能性を感じたことを今も鮮明に覚えています。PRP療法は現場から求められた問いに対し、回答することができる有力な手段の一つであると感じています。

本治療は『再生医療等の安全性の確保等に関する法律』に則り、第二種再生医療等、第三種再生医療等として再生医療等提供計画の認可を得て、定期的に厚生労働省へ治療報告を行っています
提供計画番号 PB3230086:自家多血小板血漿(Platelet-rich plasma:PRP)を用いた慢性関節炎の治療(関節内組織)
提供計画番号 PC3230081:自家多血小板血漿(Platelet-rich plasma:PRP)を用いた筋肉、腱、靭帯、筋膜の損傷及び慢性炎症の治療(関節外の軟部組織)

なかなか治らない怪我や慢性的な痛みに悩まれている患者さんへ

早期復帰したいが、手術を避けたいアスリートの新たな治療選択肢

アスリートは厳しい練習や競技活動により、常に身体を限界まで酷使しています。通常であれば治るケガであっても、プレーを継続することで、ケガで損傷した組織の自己修復が追いつかなくなり、ダメージが蓄積、痛みが発生し、機能不全に陥ってしまいます。
このような慢性的な痛みがある部位に、PRPを注入することで組織の治癒促進を促します。
WADA(国際アンチドーピング機構)ではドーピング対象外として扱われていますので、アスリートも安心して治療を受けることができます。

PRPの治療対象は?

PRPは関節、靭帯、筋肉、骨といった組織の治癒促進に利用されています。海外ではすでに多くのプロスポーツ選手、アスリートなども利用しており、日本でもメジャーリーガーとなった田中将大選手や大谷翔平選手も肘の故障で、この治療を行なったことで知名度が上がってきています。

一般に、スポーツ外傷の場合、一番多いのがやはり足首の捻挫と肉離れです。 受傷後早期から治療を行うことで治療期間の短縮や、痛みの改善が期待できます。 その他、外来診療でよく遭遇するのはテニス肘と足底腱膜炎(そくていけんまくえん)です。 これらの疾患慢性化しやすく、ステロイド注射をしてもなかなか長期にわたって痛みに悩まれている患者さんが多いですが、PRP注射により改善の可能性があります。

適応疾患

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)・ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)・野球肘(肘内側側副靭帯損傷)・アキレス腱炎・ジャンパー膝(膝蓋腱炎) 足底腱膜炎・手根管症候群・捻挫・靭帯損傷・半月板損傷・肉離れ・腱板炎・疲労骨折 など

その他、代表的には変形性膝関節症・変形性足関節症・変形性指関節症・変形性股関節症などの関節症によく使用されます(これらについてはこちらをご確認ください)。

PRP(多血小板血漿)とは

患者さんの血液を使い自己治癒力高め、切らずに痛みを改善

転んでひざを擦りむいたりして出血しても、かさぶたになって自然に止まり、しばらくすれば傷も治ります。この自然治癒は血小板という血液成分が主に作用して起こるものです。血小板は傷がある部分に集まって、成長因子を放出します。成長因子とは組織の修復を促し、痛みの原因である炎症を抑えます。

PRP(日本語では多血小板血漿)は、患者さんの血液を加工して抽出した血小板やその他の有効成分の複合的な働きにより自己治癒力を高め、痛みや炎症の改善を後押しする治療法です。

PRP療法の特徴

注射で行える日帰り治療

採血を行った当日に短時間で治療を受けることができます。

効果が長続き

筋肉や腱の疾患に一般的に行われるステロイド注射と比較して、長期的な作用が期待できます。

副作用のリスクが少ない

患者さんの血液だけを使用し、治療を行います。そのため、アレルギー反応や拒否反応などのリスクが少ない治療法です。

PRPはこんな患者さんに選ばれています。

入院手術は避けたい

試合を休めない仕事や家庭の事情で時間が取れず、入院ができない。

すぐにスポーツ活動に復帰したい

ケガで安静が必用と言われているが、どうしても出なければならない試合がある。

ステロイド注射などの一般的な保険治療の効果がない方

何度もステロイド注射を受けたが改善せず、長年痛みに悩まされている。

当院の再生医療(PRh2:P療法)の特徴

詳細はこちら

当院の再生医療(PRh2:P療法)、3つのアピールポイント

1. 超音波診断装置を使った確実な注射

当院の再生医療(PRh2:P療法)の特徴

レントゲンやMRIで見つけにくい小さな病変部を超音波画像診断装置下で正確に捉え、そこにPRPを正確に患部に注射します。
超音波画像診断装置を使用した治療はそうでない治療より、正確で、治療効果が高いと言われています。

  • レントゲンやMRIで見つけにくい病変の診断
  • 病変部への確実で効果の高い注射

2. PRP療法のスペシャリスト医師によるオーダーメイド治療

PRP療法に関して国内有数の経験症例を持つ清水医師がこれまでの経験と合わせて、PRPの成分毎の使い分けや量、投与回数、他治療との併用など患者さんの病態に合った適切なPRP療法を実施致します。

医師 清水勇樹
  • PRP療法治療数1700例以上(2023/9現在)
  • 学会発表多数
  • PRPの使い分け
  • スペインquironsalud病院にてPRPの権威Dr.Cugatによる研修受講
清水医師の講演歴
  • 2023/07 国内学会講演 第34回日本整形外科超音波学会 ランチョンセミナー
    『超音波を駆使した難治例の攻略メソッド -レベチの PRPを目指して』
  • 2023/05 国内学会講演 第96回日本整形外科学会学術総会 ランチョンセミナー
    『多血小板血漿(PRP)の限界と限界突破への試み ―スポーツ外傷・障害から変形性関節症まで―』
  • 2022/07 国内学会講演 第33回日本整形外科超音波学会 シンポジウム
    『多血小板血漿(PRP)療法 10年以上にわたる治療経験 ~続けてきたからこそ見える適応と限界と工夫~』
  • 2022/05 国内学会講演 第95回日本整形外科学会学術総会 ランチョンセミナー
    『クリニックにおける多血小板血漿(PRP)療法による臨床の実際 10年以上に渡る治療経験より』
関連記事

骨と関節と筋肉の再生医療 肉離れなどの怪我に悩まされているアスリートの新たな治療選択肢 ACP PRP療法

3. リハビリテーションの提供

リハビリテーション室

PRP療法の効果を最大限に引き出し、効果を持続させるためにはリハビリテーションが重要と言われています。
当院ではPRP療法後のリハビリテーションの体制も同施設内に充実しています。
やりっぱなしの治療にしないをモットーに経験、技術力で、痛み解消や目的のレベルの運動能力まで徹底的にサポートします。

  • PRP後のリハビリテーションも責任をもって実施

当院の再生医療(PRP療法)内容

PRPは使用する医療機器や調整方法により、含有される成分の構成が変化します。
当院では、PRPの経験豊富な医師が選んだ3つの治療方法を提供しています。
患者さんのひざの状態に応じて、これらの治療を単体または複合的に使用することをご提案させていただく場合がございます。

当院は、安全に細胞を加工が行える基準を満たす施設として、細胞培養加工施設として厚生労働省から認可を受けております(細胞培養加工施設番号FC3230044)。

1. ACP-PRP療法

国内で承認された専用の医療機器を使って、少量(15ml)の血液から短時間で黄色く純度の高いPRPを精製します。
国内外で広く利用されており、治療に用いる医療機器を使った複数の信頼性の高い試験の結果が権威のある医学雑誌に投稿されており、高い安全性と治療効果を確認できます。
また、コストも相対的に安価に提供できるため、PRP療法をお試ししたい方への最初の選択肢~治療を気に入って何度も受けたい方へ幅広くご紹介しています。

ACP-PRP療法の特徴
  • 受診当日に待ち時間15分程度で治療可能
  • 採血量は15mlのみ
  • 治療に用いる医療機器を使った複数の信頼性の高い試験の結果が権威のある医学雑誌に投稿されている
  • 清水医師が同治療を用いた治療結果を学会報告しており、結果から有効性が示唆
ACP-PRP療法

2. PRP-FD療法

PRP-FDは、外注先の施設内にてPRPに含まれる成分から治療の有効成分と考えられている成長因子を抽出、濃縮を行います。
PRPはフリーズドライ化されるので採血後長期の保管が可能です。

PRP-FD療法の特徴
  • PRP-FDは採血から6か月間保存が可能
  • 成長因子をPRPの2倍に濃縮
  • 外注先の施設で加工が必要なため、治療は採血から14-18日以降に再度来院必要

3. カスタムメイドPRP療法

最新の医学的知見に基づき、患者さんの状態毎に最適と考えられるPRPの濃度や成分の割合を調整します。
少ない治療回数でより効果の高い治療を望む患者さんにお勧めしている治療になります。
海外文献では比較的症状の進行した患者さんにも使用されています。

カスタムメイドPRP療法の特徴
  • 受診当日に治療可能
  • 患者さん毎に医師が最適と考える濃度や量に調整
  • 必要とされる治療回数が少ない
  • 採血から治療まで待ち時間は30-45分程度
  • 成長因子(PDGF-BB)を最大20倍濃縮
カスタムメイドPRP療法

PRP療法の流れ

1. 診察(保険診療)

現在の症状、過去の治療歴を伺います。

  • 必要に応じてMRIやレントゲン、血液検査 を行う合があります。
  • 治療の適応があると判断した場合、治療の注意点をご説明します。
  • 患者さんが普段服用している薬には血小板の機能を阻害するものが含まれていることがあります。服用中の薬がある場合には診察中に相談ください。

※治療経過や症状によっては、PRP療法よいも先に検討した方が良い治療方法を御案内する場合があります。

2. PRP予約とインフォームドコンセント・同意書の説明

PRP治療について説明と同意後、予約を行います。
※ステロイドやNSAIDs(ロキソニンやボルタレン)を使用している方は注射実施前、Wash Out期間(1ー2週間)が必要(吸引薬や外用も含む)

3. 採血・治療(保険適応外診療)

受付を済ませ、同意書を確認後、採血を行います。
PRPの調整の間5~30分程度お待ちいただきます。
調整完了後、PRPを注射します。

  • FD-PRP療法の外部機関での血液の加工のため、採血と別日に治療を受けていただくために再度のご来院が必要です。
    血液加工に必要な時間は14-18日になります。
  • 病気やケガの状態や場所により、目的とするPRPの濃度を変更するため、採血量を調整します。
  • エコーガイド下に患部を観察しながら、局所麻酔を希望に応じて実施し、その後、正確に患部へPRPを注入します。
  • 損傷した腱や靭帯のような緻密結合組織の場合、圧をかけて注入するため激痛を伴うことがあります。
  • 治療後は10分程度安静にしていただき、問題なければそのまま歩いて帰宅いただけます。

体外衝撃波治療(ESWT)との併用

ここ4-5年の間にPRPとESWTを併用した治療がより効果が高いことが報告されています。
当院では、拡散型体外衝撃波治療機器(ESWT)を導入しておりますので、併用も可能です。
体外衝撃波治療により得られる効果としては、疼痛を誘発している神経終末部の変性・破壊や疼痛伝達物質の減少、血流の改善が考えられており、PRPの効果をより発揮できる環境となります。
よって、採血後、PRP投与前の待ち時間に体外衝撃波治療を実施し、PRP完成後に患部にPRPを投与するPRP+ESWT併用療法をお勧め致します

治療期間及び回数

標準的な治療期間
3~6ヶ月
標準的な治療回数
1~3回

1-3回のPRP療法を終了後、約3か月後、6ヶ月後に、症状や日常生活レベルの改善、レントゲン写真や超音波画像やMRI検査所見がどのように変化したかを評価します。

リスク副作用

PRP の原料には、患者様ご自身の血液を用います。
他人の組織を移植する場合に用いる免疫抑制剤を使うことがないため、免疫抑制剤による副作用の心配はありませんが、採血のために静脈内に注射針を刺す行為が必要です。
採血量は 13.5mL から最大で 154mL ですので、通常の献血量の 200mL、あるいは 400mL に比べて少量であり、比較的安全性の高い処置だと考えられますが、ごく稀に以下の表に示す合併症 (手術や検査などの後、それがもとになって起こることがある症状) の報告があります。
また、PRP 治療に関連した偶発症 (稀に起こる不都合な症状) や合併症も考えられます。
これらの合併症が起きた場合には最善の処置を行います。

採血に関連するリスク

偶発症・合併症 頻度・対応など
採血に伴う痛み 痛みの感じ方には個人差がありますが、通常の場合、次第に治まります
気分不良、吐き気、めまい、失神 0.9%(1/100 人)*
失神に伴う転倒 0.008%(1/12、500 人)*
皮下出血 0.2%(1/500 人)*
神経損傷(痛み、しびれ、筋力低下など) 0.01%(1/10、000 人)*

* 献血の同意説明書 (日本赤十字社) より転記

PRP注入に関連するリスク

偶発症・合併症 頻度・対応など
感染 PRP 調製にあたっては、細菌などの混入を防止する対策を取っていますが、完全に混入が起こらないとはいえないため、注入後は、注意深く観察を行います。
感染の症候が認められた場合には、抗生剤の投与など適切な処置を行います。
注入の痛み 注入後は必要に応じ、鎮痛剤を服用していただきます。痛みの感じ方には個人差ありますが、痛みは次第に治まります。
注入部位の腫れ 注射後 3~4 日は、細胞の活発な代謝が行われますので、腫れやかゆみ、赤みや痛みが出るなどがありますが、自然に消失していきます。
施術部位の内出血(紫色になる) 次第に治まります。

関節の痛みと変形性膝関節症

詳細はこちら

関節痛の原因や、関連の病気は様々ありますが、最も多い訴えは膝です。膝関節の痛みの中でも最も一般的な原因は、変形性膝関節症だと広く知られています。変形性膝関節症は、軟骨(膝のクッション)が加齢によってすり減ることで、炎症を起こしたり関節の変形などが起きたりと、痛みや腫れを生じる病です。明らかな原因(外傷や感染等)があって発症するケースもありますが、加齢が主な原因であり、かつ肥満や使いすぎ、遺伝的な背景などの複合的な原因が重なって発症します。発症は50,60歳頃から増え始め、男性より女性がなりやすく、国内では、約1000万人もの方が悩まされていると言われています。

変形性膝関節症の症状と進行過程

変形性膝関節症の症状と進行過程

主な症状は、膝の痛みや腫れが挙げられます。軟骨がすり減ることで「関節炎」が起き、炎症が膝の痛みや腫れに繋がります。初期症状としては、立ち上がり、歩きはじめなどの痛みが出ます。進行に伴い、正座や階段の昇り降りが困難になり、関節に水がたまるケースもあります。変形が進行すると、膝の曲げ伸ばしや歩行も難しくなり、手術でしか症状を抑えられなくなってしまいます。

関節炎 軟骨のすり減り 関節の隙間の狭まり

PRP療法は変形性膝関節症に起因する関節炎を抑え、病態進行の抑制が期待されています。手術は避けたい患者様や、年齢的に手術の適応とならない方の新たな選択肢となってきています。

PRP療法とは?

日本語では多血小板血漿療法と言い、血小板(血液中の成分)の機能を利用した再生医療の一つです。血小板に豊富に含まれる成長因子が、治癒を促進する働きを持っています。
血小板を含む血液成分を濃縮し患部に注射することで、血小板の持つ成長因子が修復能力を一時的に高め、痛みや関節機能の改善に寄与するとされています。

治療の特長

  • 患者様の血液を材料としているため、アレルギー反応や拒否反応などのリスクが少ないです。
  • 継続利用による副作用やリスクは少ないとされているため、長期に渡り使用することが可能です。
  • 採血した当日に短時間で治療を受けることができます。

PRPの作用と成長因子の働き

PRP療法における「成長因子」とは、細胞分裂を活性化するタンパク質の総称です。特に、血小板由来の代表的な成長因子は、次のような作用を変形性関節症に対してもたらすとされています。

PDGF 新しい血管の形成。関節炎の抑制。軟骨細胞死の抑制。細胞増殖。幹細胞を集める。
TGF-β 新しい血管の形成や安定化。関節炎を抑制。幹細胞を集める。軟骨の骨組み(コラーゲンなどの細胞外基質)の生成を促す。
VEGF 新しい血管の形成を促す。
SDF-1 幹細胞を集める。
SDF-1
PRP調整に使用する血液量や調整方法の変更により、成長因子の濃度を、最大20倍(PDGF-BB)まで濃縮して使用します。
SDF-1

PRPの調整

白血球の一種の単球も成長因子を含有しており、組織修復への関連性があると考えられています。一方、赤血球や好中球は分解成分を多く含んでいるため、濃縮しすぎてしまうとPRPの作用を阻害するとされています。
そのため投与する部位や疾患に応じて、血液成分の含有濃度を適切に調整します。

治療に関連する血液中の主な成分

血漿(けっしょう) 血液に含まれる黄色い液体成分。細胞への栄養、組織のバランスの調整、止血、免疫などに働く成分を含む。
血小板 損傷箇所へ細胞を集めたり、タンパク質(組織修復に作用する)を含んでいたりと、損傷部位で活性化し、それらを供給する。
単球 白血球の一種。異物や死んだ細胞の除去や、炎症増強、組織修復に導いたりするタンパク質を豊富に放出するなどして、炎症の制御を行っている。
好中球 白血球の一種。体外から入ってきた異物の殺傷、組織分解に働く成分を多く含んでいる。急性期の炎症反応に関連。
赤血球 体外物質の殺傷にも関連した物質を多く含む。通常PRPから取り除かれる。
※組織分解や炎症増強、細胞死を引き起こすため

PRP療法の流れ

1. 診察

症状と治療歴を伺います。

  • (必要に応じて)MRIやレントゲン、血液検査を行います。
  • 適応があると判断した場合、注意点をご説明します。
  • 普段服用している薬に血小板の機能を阻害するものが含まれていることがあります。服用中の薬がある場合には診察中に相談ください。

2. 採血・治療

採血後、PRP調整のため30分程度待機していただきます。調整完了後、PRP注射します。

  • 病気やケガの状態や場所によってPRP濃度を変更するため、採血量を調整します。
  • 10分程度安静にして様子を伺い、問題無いようであれば歩いてお帰りいただけます。

治療後の注意点・安全性

治療後の注意点

  • 治療当日は入浴を控え、シャワー浴にしてください。翌日から入浴可能です。
  • 治療後24時間以降、治療部位に腫れ等、異変がなければ運動可能です。
  • 体を動かしていない期間が長い場合、急な激しい運動はケガの原因になります。ウォーキングなど軽い運動から再開してください。

安全性

可能性としては、関節内の感染、血栓、敗血症、アレルギー反応、関節内出血が考えられます。ただ、ヒアルロン酸、生理食塩水の投与と比較しても、リスクは上がらないという調査報告があります。また、調整方法次第では注射した部位に炎症が出る場合もあります。

よくあるご質問

痛みの改善効果はどのくらい続きますか?
変形性膝関節症の治療では、平均1年間、痛みの改善が持続したと報告されています。
※個人差があります
効果はいつから現れますか?
平均的に4〜6週後程度の効果が実感されます。
※個人差があります
治療を受けられない人はいますか?
一部の血液疾患、ガン治療中の方は受けられません。
また、関節の変形が重度の場合は手術の方が適しているケースもあります。
※年齢は問いません
回数制限はありますか
複数回の治療は問題ないとされています。投与頻度や間隔は調整可能です。
効果を持続させるためにできることはありますか?
痛みがおさまった後ですが、運動療法を併せて行うことが挙げられます。
これにより長期の症状緩和が期待できます。
肥満気味の方は体重を減らし、関節への負担を減らすことで、より良い効果が持続する可能性を高められます。

(参考文献)

  • Isabel Andia et al: Platelet-rich plasma for managing pain and inflammation in osteoarthritis. Nature Reviews Rheumatology volume 9, pages721– 730 (2013)
  • Hillary J. Braun et al: The Effect of Platelet-Rich Plasma Formulations and Blood Products on Human Synoviocytes Implications for Intra-articular Injury and Therapy. The American Journal of Sports Medicine. 2014; Vol. 42, No. 5
  • Jia Zhu Tang et al: Platelet-rich plasma versus hyaluronic acid in the treatment of knee osteoarthritis: a meta-analysis. J Orthop Surg Res. 2020 Sep 11;15(1):403
  • Jun-Ho Kim et al: Adverse Reactions and Clinical Outcomes for Leukocyte-Poor Versus Leukocyte- Rich Platelet-Rich Plasma in Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis. Orthop J Sports Med. 2021 Jun 30;9(6):23259671211011948.
  • Edward S Mojica et al: Estimated Time to Maximum Medical Improvement of Intra-articular Injections in the Treatment of Knee Osteoarthritis-A Systematic Review. Arthroscopy. 2022 Mar;38(3):980- 988.e4

多血小板血漿(PRP)による治療とは

当院は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」において求められる「再生医療等提供計画」に関する届出を関東信越厚生局に提出・受理されております
(第三種 計画番号:PC3230081/第二種 計画番号:PB3230086)。
これにより第二種・細胞培養加工物(PRP)の各関節内への投与、ならびに第三種・細胞培養加工物(PRP)の筋肉・腱・靭帯への投与が可能になっております。
PRP療法とは、患者様自身の血小板を利用した自己治癒力を高める、再生医療の一種で、スポーツ医学分野において欧米では10年以上の実績があり、トップアスリートも、肘内側靱帯損傷にPRP療法を行った実績があります。この詳細は、血小板から組織修復を促進する成長因子が供給され、損傷組織の修復が促進されるという自己治癒力をサポートするメカニズムを利用したものです。

受診の流れ

1.カウンセリング&診察(保険診療)

PRP治療

PRP治療が最適かどうか検討いたします。

  1. 1. カウンセリング(問診)
  2. 2. 診察
  3. 3. 画像検査
  4. 4. 採血検査
  5. 5. 総合判断

※治療経過や症状によっては、PRP療法よいも先に検討した方が良い治療方法を御案内する場合があります。

2.PRP予約とIC・同意書の説明

PRP治療について説明と同意後、予約を行います。

  1. 6. PRP治療の説明と同意
  2. 7. 予約
  3. 8. 処方

※ステロイドやNSAIDs(ロキソニンやボルタレン)を使用している方は注射実施前、Wash Out期間(1ー2週間)が必要(吸引薬や外用も含む)

PRP療法当日の流れ(保険適応外自由診療)

  1. 受付を済ませ、同意書を確認後、採血を行います。
  2. 採血から治療まで約15~30分程度で完了します。
  3. 採血後にACPキットを遠心分離機にセットし5分間遠心をかけます。
  4. 1キットで15ml採血し、3-6ml程度のPRPを作成可能です。
  5. 遠心終了後に、キットを取り出し、PRPを採取します。
  6. エコーガイド下に患部を観察しながら、局所麻酔を希望に応じて実施し、その後、正確に患部へPRPを注入します。
  7. 損傷した腱や靭帯のような緻密結合組織の場合、圧をかけて注入するため激痛を伴うことがあります。
  8. 投与後、弾性包帯固定を行い、PRPが患部に留まり損傷組織との反応させるために、指定の肢位にて10分間安静にして頂きます。
  9. その後、患部に問題が無ければ、帰宅可能です。
  10. <投与量>
    PRPの効果は、海外の文献によると、投与量に依存する(dose-dependent)ことが報告されておりますが、別の文献では6倍以上の濃度で、効果は頭打ち(増加しない)となることが分かっております。
    そのため、当院では、患者様の病態にもよりますが、1キットよりも2キット同時投与をお勧めいたします。
  11. <投与回数・間隔>
    国内海外の文献によると、関節内疾患に対しては、3~4週間毎に3回PRP療法を1クールとして行っている文献が多くあります。
    当院でも同様なスケジュールで行います。
    必要に応じて追加投与も検討します。
  12. <体外衝撃波治療との併用>
    ここ4-5年の間にPRPとESWTを併用した治療がより効果が高いことが報告されています。
    当院では、拡散型体外衝撃波治療機器(ESWT)を導入しておりますので、併用も可能です。
    体外衝撃波治療により得られる効果としては、疼痛を誘発している神経終末部の変性・破壊や疼痛伝達物質の減少、血流の改善が考えられており、PRPの効果をより発揮できる環境となります。
    よって、採血後、PRP投与前の待ち時間に体外衝撃波治療を実施し、PRP完成後に患部にPRPを投与するPRP+ESWT併用療法をお勧め致します。

※再生医療の治療は全て当日中に完了

治療後の注意点

  • PRP投与後30分もすると、成長因子の放出が始まるため、早い方で30分後より患部に疼痛などの症状が出現します。
  • 注射直後は疼痛のために、稀に歩行困難な方もいらっしゃいますが、通常アイシングなどを行い10-15分程度休憩すれば、徒歩で帰宅可能です。
  • 投与前後の疼痛に関しては、PRPによる治癒過程をブロックしてしまうため、消炎鎮痛剤に使用できるものと使用できないものがございますので、担当医に確認ください。
  • 日常生活動作は注射当日から可能です。
  • 治療後3~4日間は、細胞の活発な代謝が起こる炎症期のため、痛みや腫れを生じることがありますが、徐々に軽減していきます。
  • リハビリについては、翌日から疼痛に応じて可能です。ただ、患部に直接刺激が加わる様な鍼や体外衝撃波療法は、PRP後1週間経過するまでは控えて下さい。
  • 詳細は診察時に担当医にお問合せください。
  • 1-3回のPRP療法を終了後、約3か月後、6ヶ月後に、症状や日常生活レベルの改善、レントゲン写真や超音波画像やMRI検査所見がどのように変化したかを評価します。
  • PRP療法を受けた患者様の個人を匿名化し、症状や画像の治療経過など分析を行い、学会や医学雑誌で報告することで、将来、より良いPRP療法を提供できるよう努めたいと思います。どうぞ、ご理解ご協力をよろしくお願い致します。

費用

多血小板血漿(PRP)は保険外診療(自由診療)となり、当院では以下の通りに価格を設定しております。
疾患・症状により複数回の治療が望ましい場合もありますので、詳細は診察時に担当医にお問い合わせください。

PRP三種
関節外注射(靱帯、腱、筋肉など)1回あたり: 20,000円(税別)
PRP二種
関節内注射:30,000円(税別)

※先進医療や高額医療の補助の対象とはなりません。
※注射実施日の痛み止めや湿布の処方、および検査やリハビリもすべて自費となりますのでご注意ください。

種別 PRP種類 値段(税抜)
第2種(関節内) 片側 ACP ¥30,000
片側 Angel ¥185,000
両側 Angel ¥300,000
第3種 (関節外) ACP ¥20,000
Angel ¥165,000
関節内・外 PFC-FD ¥150,000

PRP当日はすべて自費診療のため、PRP代の他に、診察料など別途かかります。

よくあるご質問

どういった症状の場合、PRP療法が有効ですか?
変形性膝関節症についていえば、人工関節の適応とはならない程度の重症度であり、ヒアルロン酸注射を何度も受けたが改善しない方適応となると考えております。
スポーツ関連疾患(外傷・変性)についていえば、保険診療におけるリハビリを十分行ったが改善が見られない腱の変性疾患やスポーツを行っており、捻挫や肉離れ等の症状があり、少しでも早期復帰を望む方も適応となると考えております。
PRP療法は保険診療における治療と比較し、どのようなメリットがありますか?
高額な治療ですので、保険診療で治療できる場合には保険診療で治療をすることをお勧めしますが、保険診療における治療で無効であり、手術しか選択の無い患者様は一度考慮してよい治療といえるかもしれません。
変形性膝関節症についていえば、関節の健康寿命を延ばせる可能性のある治療として、スポーツ関連疾患(外傷・変性)についてはスポーツへの早期復帰や手術の回避の可能性のある治療として期待されています。
PRP療法はどの程度の期間で効果が実感できますか?
変形性膝関節症では先行する研究データによると治療後1-2週間程度で効果が徐々に表れ始め、2か月後程度から効果が実感されてくることが示されています。
ただしこれらはあくまで平均値ですので、ばらつきはあります。
また、重症度や年齢等によっても効果が左右される可能性があります。
APS療法と何が違うのですか?
APS療法は一言でいうと抗炎症性の成分が濃縮されたPRPです。
1回の注射で一般的なPRPと類似する作用が1年にわたり作用する可能性が示唆されていますが、キットが高額なので治療費がかなり高額となっているようです。
まだデータが乏しく効果の優劣を十分に行うことは難しいのが現状です。(Kon et al. 2018) (Smith et al. 2016)

PRP療法について(Arthrex社製ACPダブルシリンジシステム使用)

多血小板血漿(以下、PRP)療法は患者様の血液を加工し、組織の再生に関連する成分を抽出、疾患のある部位に投与することで、“患者様自身の体がもつ修復力”をサポートし、改善に導く治療です。
自分の血液を用いるため重篤な副作用なく利用できることが特徴です。

具体的な治療方法は、患者様の血液(15ml)を採取し、5分間の遠心分離処理をします。
遠心分離をすると血液が成分に応じて分離するので、血小板を多く含む血漿部分層をPRPとして採取し、これを患部に注射します。

近年の研究で、PRPの血漿や血小板には組織の修復を促進する成分が含まれていることが動物を用いた実験などで確認されており、PRP療法は整形外科においても創傷の治癒促進、疼痛改善に用いられてきました。
しかしながら、化学化合物から構成される薬剤と比べ、PRPは本質的に自己由来の様々なタンパク質(成長因子やサイトカイン)で構成された複合体であるため、作用メカニズムについて詳細な科学的証明が非常に難しいという性質があります。
また、調整方法によりPRPに含まれる成分は大きく変わってしまいます。
そのため、作成するPRPと同一、また、同一分類のPRPを用いた先行研究をもって効果を確認することが重要です。
当院では国内で高度管理医療機器として承認されているPRP作成キットを使用し、Leukocyte-Reduced PRP(白血球を極力除外したPRP)を作成し、治療を行っております。
Leukocyte-Reduced PRPは組織の分解や炎症亢進(異化作用)に関連性の高い白血球(特に好中球)並びに赤血球を極力除外し、血小板と血漿中に含まれる組織再生優位に働く成分(同化作用)を多く含んでいるという性質があります。
また、Leukocyte-Reduced PRPによる治療は整形外科における権威ある学術雑誌において、変形性関節症や軟部組織の局所的な部位の早期治癒や疼痛低減への関連性が統計的に示されています。

清水医師のPRP療法の経験

私は、PRP療法を日本でもいち早く取り入れ、2010年にJリーガーの難治性膝蓋腱炎に初めて施行し、劇的な回復を経験して以来、スポーツ選手だけでなく、上腕骨外上顆炎(テニス肘)や変形性関節症に悩む患者さんに対し、数多くのPRP療法を実施し、症状の改善や治癒の促進が進む症例を経験して参りました。(PRP治療歴参照)

清水医師のPRP治療歴
  • 2010~2013年 産業医科大学病院スポーツ関節鏡班 産業医科大学大学院
    年間50~100例
  • 2014~2015年 福岡スポーツクリニック堺整形外科
    年間約100例
  • 2016年 産業医科大学若松病院
    年間約20-30例
  • 2017年~AR-Ex 尾山台整形外科東京関節鏡センター
    年間約10-20例
  • 2019年12月ISAKOS認定教育研修quironsalud病院(バルセロナ・スペイン)
    PRP治療と手術の研修修了証取得
  • 2020年2月~ 日本体育大学クリニックPRP療法(第三種:関節外)
  • 2020年8月~ 日本体育大学クリニックPRP療法(第二種:関節内)
    年間約400-600例
  • 2023年7月~ 稲城平尾整形外科クリニック PRP療法開始
PRP外来手術研修修了証 by Dr.Cugat
PRP外来手術研修修了証
当院のPRP療法の強みと病態に応じたPRP療法の工夫

近年ではPRP療法についての研究が進み、PRP療法といっても、調整方法、投与量、投与回数、他の治療との併用などの様々な報告があり、医療施設毎にその方法が異なります。 当院では、2019年に欧州PRP療法の権威であるDr.Cugatが在籍されるスペイン・バルセロナのQuironsalud病院でのPRP療法外来手術研修を踏まえ、これまでの経験と合わせて、白血球の多いPRPと白血球の少ないPRPの使い分けや量、投与回数、他治療との併用など患者さんの病態に合った適切なPRP療法を実施致します。もちろん、PPR療法の効果については、損傷の程度や血小板作用など個人差もあり、確実に効果があるとは一概には言えませんが、抗凝固剤など他の薬剤も使用せず、患者さん自身の血小板を利用した自己治癒力を高める治療であるため、安全な治療です。また、超音波診断装置を用いて超音波ガイド下で確実に損傷部位にPRPを投与します。

検討しやすいPRP療法 手術に至る前の最適な選択肢の一つとして

PRP療法は保険診療の適用外のため自費診療となります。「プチプラPRP」として、料金も比較的低価格に設定しました。 そう言ってしまうと、安かろう悪かろうと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、当院のPRP療法は、無菌操作で安全かつ簡便に再現性高く、組織修復有意な環境に作用するPRPを作成できる高度管理医療機器として承認されたPRP作成キットを使用しています。また、臨床試験でも変形性膝関節症については、8本以上のエビデンスレベルの高いLevel1 RCT(ランダム化比較試験)が権威のあるスポーツ医学雑誌(AJSM, Arthroscopy, KSSTA)に投稿されており、どれも優秀な成績を収めていることから、安定的な作成方法といえると思います。肉離れ、腱・靭帯損傷からのスポーツへの早期治癒・復帰目的や難治性スポーツ障害・変形性関節症などの手術に至る前の最適な治療の選択肢の一つとして、ご検討下さい。

  • 血液を示した図
    遠心分離前
  • 血液を示した図
    遠心分離後

(Anz et al. 2019)
Plasma:血漿 Platelets:血小板 Other WBS:白血球 Neutrophils:好中球(白血球の一種)RBCs:赤血球

[遠心前の血液と分離した後の血液を示した図(赤枠内がPRPとして採取される部分)]

組織の分解や炎症亢進に関連性の高い白血球(特に好中球)並びに赤血球を極力除外し、血小板と血漿中に含まれる組織再生優位に働く成分を多く含む部分を回収します。血小板を大量に回収するため過度に濃縮してしまうと組織治癒に望ましくない赤血球や大量の白血球(好中球)の混入を許してしまいます。

治療対象の疾患と作用・効果 海外文献より

治療対象の疾患と作用(変形性膝関節症)

変形性膝関節症は関節軟骨の老化、肥満や素因(遺伝子)、また骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などを主因として発症します。
例えば、加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、使い過ぎによりすり減り、関節が変形していきますが、同時に分子レベルでも組織修復のバランスの破綻が生じることで疼痛やさらなる関節の変形が促進される負のサイクルが発生します。Leukocyte-Reduced PRPは組織の分解有意に偏ってしまった関節に対して、組織修復的に働く成分を注入し、バランスをとり、組織修復的な状態に移行させることを目的としており、重症度に応じ治療回数を決定します。患者様の実感としては疼痛低減やこわばりの改善、現状以上の変形の進行の抑止、場合によっては組織の回復等が見られます。

作用について、以下の研究データによれば、変形性膝関節症の重症度が中等度の患者に対して、1週間おきに3回PRPを投与。膝関節の機能スコア:WOMAC(膝の痛みやこわばり等)が47点から10点(100点満点で0に近いほど正常な膝の状態に近い)に改善が示されています。

治療対象の疾患と作用(変形性膝関節症)

青色のACPと示されている方が、PRP治療を受けている患者のデータであり、灰色のPlaceboと示されている方が、生理食塩水(コントロール:効果の比較のために使う治療効果の無い偽薬)です。
(Smith et al. 2016)

スポーツ関連疾患(外傷・変性)

組織自体が持つ再生能力を超えて、組織への繰り返しの力学的な負荷が積み重なると組織が“変性”してしまいなかなか治りにくい環境になってしまうことがあります。Leukocyte-Reduced PRPはこれらの痛んだ組織の細胞を刺激することにより、より正常に近い環境の組織に近づけ、機能を改善することを目的としています。関節内よりも本来ある組織修復能力が高いため、治療回数は比較的少なくて済みますが、重症度により反復的な投与も必要となります。
また、スポーツを行っており、捻挫や肉離れ等の症状があり、少しでも早期復帰を望む方も適応となる場合があります。

作用について、以下の研究データによれば、リハビリをしても改善の見られないジャンパー膝に対して、2回のPRP投与と3回の体外衝撃派療法の効果を比較しており、PRPの方が効果が高かったことが示されています。(VAS:痛みのスケール 10点満点の評価で10が最も強い痛みで0が痛みなし)(VISA-P:膝の腱症の重症度 100点満点で点数が高いほど良い)

スポーツ関連疾患(外傷・変性)
当院で用いる多血小板血漿(PRP)の特長

多血小板血漿(PRP)といっても調整方法によって得られる成分が異なり、特性が異なるといわれています。 当院で用いるPRPはPRP作成用のキットとして厚生労働省に認可された高度管理医療機器、Arthrex社製のACPダブルシリンジシステムにより精製される“白血球を極力除外したPRP “です。この種のPRPを当院が選択している理由としては以下があげられます。

  • ① 信頼性の高い先行する臨床研究がある点
    権威ある整形外科雑誌にエビデンスレベル 1(科学的根拠としての信頼性が最も高い)の同一または同一種類とされるPRPを用いている研究結果が複数報告されており、安全性・治療効果を確認することができる。
  • (Creza et.al. 2012)(Smith et al. 2016)(Sánchez et al)(Sandeep et al. 2013) (Vaquerizo et al. 2013)(Cole et al. 2016)(Lin et al 2019) (Ventrano et al. 2013)(Boesen et al. 2017)
  • ② 基礎的な研究からの効果の裏付けがある点
    この種のPRPについてはヒトの細胞用いた研究や治療対象とする疾患の動物を用いた研究などから、組織再生に有効と考えられている効果が複数確認されている。

変形性関節症に関して

  • 関節のクッショニングを改善する成分(ヒアルロン酸)の合成を促進する働き(Anitua et.al 2007)
  • 軟骨の潤滑性に関連する成分を増加させ、こわばりを改善する働き(Sakata et.al. 2015)
  • 変形性関節症における軟骨の分解と疼痛を引き起こすサイクル(NF-kB)を緩和する働き(Yin et al. Med Sci Monit, 2016)等

スポーツ関連疾患に関して

  • 腱変性において、炎症低減、組織分解に関連する成分の抑制する作用(Yan et al. AJSM, 2017)
  • 腱変性において、変性組織のより正常な組織(コラーゲンタイプ1)への置換の促進する作用(González et al. Scientific Reports, 2015)等

(参考文献)

  • Adam W. Anz et al. (2019). Exercise-Mobilized Platelet-Rich Plasma: Short-Term Exercise Increases Stem Cell and Platelet Concentrations in Platelet-Rich Plasma. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 35, No 1 (January), 2019: pp 192-200
  • Wen-Li Dai et al. (2017). Efficacy of Platelet-Rich Plasma in the Treatment of Knee Osteoarthritis: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 33, No 3 (March), 2017: pp 659-670
  • Patrick A. Smith et al.(2016). Intra-articular Autologous Conditioned Plasma Injections Provide Safe and Efficacious Treatment for Knee Osteoarthritis An FDA-Sanctioned, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Clinical Trial. The American Journal of Sports Medicine, Vol. 44, No. 4
  • Fabio Cerza et al. (2012). Comparison between hyaluronic acid and platelet-rich plasma, intra-articular infiltration in the treatment of gonarthrosis. Am J Sports Med. 2012 Dec;40(12):2822-7
  • Sánchez M et al. (2012): A randomized clinical trial evaluating plasma rich in growth factors (PRGF-Endoret) versus hyaluronic acid in the short-term treatment of symptomatic knee osteoarthritis. Arthroscopy. 2012 Aug;28(8):1070-8.
  • Patel S et al. (2013): Treatment with platelet-rich plasma is more effective than placebo for knee osteoarthritis: a prospective, double-blind, randomized trial. Am J Sports Med. 2013 Feb;41(2):356-64.
  • Vaquerizo V. et al.(2013): Comparison of intra-articular injections of plasma rich in growth factors (PRGF-Endoret) versus Durolane hyaluronic acid in the treatment of patients with symptomatic osteoarthritis: a randomized controlled trial.
    Arthroscopy. 2013 Oct;29(10):1635-43.
  • Brian J. Cole et al. (2016): Hyaluronic Acid Versus Platelet-Rich Plasma A Prospective, Double-Blind Randomized Controlled Trial Comparing Clinical Outcomes and Effects on Intraarticular Biology for the Treatment of Knee Osteoarthritis The American Journal of Sports Medicine, Vol. 45, No. 2
  • Kuan-Yu Lin et al. (2019): Intra-articular Injection of Platelet-Rich Plasma Is Superior to Hyaluronic Acid or Saline Solution in the Treatment of Mild to Moderate Knee Osteoarthritis: A Randomized, Double-Blind, Triple-Parallel, Placebo-Controlled Clinical Trial Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 35, No 1 (January), 2019: pp 106-117
  • Anders Ploug Boesen et al.(2017). Effect of High-Volume Injection, Platelet-Rich Plasma, and Sham Treatment in Chronic Midportion Achilles Tendinopathy A Randomized Double-Blinded Prospective Study. The American Journal of Sports Medicine, Vol. 45, No. 9 Mario
  • Vetrano et al. (2013). Platelet-Rich Plasma Versus Focused Shock Waves in the Treatment of Jumper’s Knee in Athletes. The American Journal of Sports Medicine, Vol. 41, No. 4
  • Sakata et al.(2015): Stimulation of the Superficial Zone Protein and Lubrication in the Articular Cartilage by Human Platelet-Rich Plasma The American Journal of Sports Medicine, Vol. 43, No. 6
  • Emily A. Sundman et al. (2012) Growth factor and catabolic cytokine concentrations are influenced by the cellular composition of platelet-rich plasma. Am J Sports Med 2011 39:
  • E. Anitual wt al. (2007): Platelet-released growth factors enhance the secretion of hyaluronic acid and induce hepatocyte growth factor production by synovial fibroblasts from arthritic patients. Rheumatology (Oxford). 2007 Dec;46(12)
  • Augustus D. Mazzocca et al (2012): The Positive Effects of Different Platelet-Rich Plasma Methods on Human Muscle, Bone, and Tendon Cells, The American Journal of Sports Medicine, Vol. 40, No. 8
  • Elizabeta Kon et al. (2018). Clinical Outcomes of Knee Osteoarthritis Treated With an Autologous Protein Solution Injection A 1-Year Pilot Double-Blinded Randomized Controlled Trial. The American Journal of Sports Medicine, Vol 46, Issue 1
  • Elizabeta Kon et al. (2018). An Autologous Protein Solutino injection Reduces Knee Osteoarthritis Pain in a Saline-Controlled RCT 2 Year Outcomes. 14th World Congress of the International Cartilage Repair Society, Podium presentation
  • Juan C. González et al. (2015) Autologous leukocyte-reduced platelet-rich plasma therapy for Achilles tendinopathy induced by collagenase in a rabbit model. Scientific Reports Published: 19 January 2016
  • Yan R et al. (2017) Intratendon Delivery of Leukocyte-Poor Platelet-Rich Plasma Improves Healing Compared With Leukocyte-Rich Platelet-Rich Plasma in a Rabbit Achilles Tendinopathy Model. The American Journal of Sports Medicine, Jul;45(8):1909-1920.